災・篆文

12月に入りました。12日には京都清水寺で恒例の「今年の漢字」の発表も行われます。それにちなんで、「今年の漢字」一字を予想してみます。

今年もいろいろなことがありました。2月の平昌冬季五輪のように元気をもらった出来事があると思えば、6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、9月北海道胆振での地震、台風等自然災害に翻弄された年でもありました。

災・篆文

災/篆文2200年前

平成最後の「今年の漢字」の本命は、(選ばれてほしくないですけど)やはり自然災害の「」でしょうか。「災」は2004年に新潟中部地震や台風の被害などで一度選ばれていますが、同じ字が繰り返されて選ばれる例が他にもあります。2000年・2012年・2016年の「金」です。このラジオでも「災」は9月10日(第99回放送)で取り上げています。「災」は「せき止められた川」と「火」とを組み合わせた字です。川をせき止めて氾濫させ、火の猛威で人を苦しめる、その「わざわい」を示す字でした。

平・金文

平/金文3000年前

成・甲骨

成/甲骨3300年前

二番手は、「」です。2月の平昌五輪の「平」、平成最後ということで「平」が選ばれるかもしれません。「平」は「于(う)」と「八」との組み合わせ。于は物を削る時の手斧(ちょうな)の形。「八」は削られた木片の形。手斧で木を平らかに削って木片が右に左に飛び散る形が「平」で、「たいらかにする、たいら」の意味となりました。

ちなみに、平成の「」の成り立ちは、「戈(か・ほこ)」と「丨(こん)」との組み合わせ。「戈」は武器の(ほこ)、「丨」は「飾り物」を表しています。「成」は(ほこ)の制作が終わり、戈に飾り(丨)をつけて(はら)い清めることを示し、「成就する、なる、なす」の意味となりました。平成は「平和になる」という意味だと思っておられるかもしれませんが、成り立ちからいえば、「平らかにする」と「作り終えた(ほこ)」。「戈(武器)をもって平らげる」というような意味にも取れることばです。

熱・篆文

熱/篆文2200年前

暑・篆文

暑/篆文2200年前

三番手は「」or「」です。異常に暑い夏でしたので、「あつい」という字も有力です。ただ、2010年に「暑」が選ばれているので?です。この字も7月23日(第96回)のラジオで取り上げました。

水・甲骨

水/甲骨3300年前

力・甲骨

力/甲骨3300年前

4番手以降は「水害」の「」。「自然の力」の脅威、「権力」の横暴、スポーツ界での「パワハラ」など「」。「力」は田を耕す「(すき)」の形。

外・金文

外/金文3000年前

改・金文

改/金文3000年前

外国人労働者・観光客の増加で「」。森友文書改ざん、改元で「改」等など。「外」は「夕」と「卜」との組み合わせ。「夕」は肉の形。「卜」は占い。亀の甲羅を使う占いに用いる語。亀の肉を外してその腹甲を占いに用いました。「はずす、そとがわ ほか」等の意味として用います。

」は古くは「()」と「攵」との組み合わせ。巳は呪いをかける虫。その虫を打って(攵)災いを他に転じること。改めるとは、もとは(たた)りを祓い清める儀礼のことを指しました。

大・甲骨

大/甲骨3300年前

大穴は「」。大谷、大迫、大坂なおみ選手の活躍で「大」。「大」は手を横に広げて大きく見せる人の正面形。

訪・篆文

訪/篆文2200年前

私はこの夏、久しぶりに中国の鄭州・安陽を訪ね、楽しいひと時を過ごしたので「訪」が個人的な今年の漢字です。「」は広く神様にお願いすること。神社に出向いて神様の意向を問う意味から「たずねる」そして「おとずれる」等の意味となります。今は人を訪ねる、観光地を訪れるなど広い意味で用います。

皆さんならどんな「今年の漢字」一字を浮かべられますか。

放送日:2018年12月10日

 

<追記>

12月12日、清水寺で今年の漢字の発表がありました。今年は「災」。10日のラジオ放送で予想したとおりでした。来年は「災い」のない年でありますように。