二百回(二百回)

チリも積もればではないですが、2014年5月から始めたこのコーナーも200回を迎えました。あしかけ9年。こんなに長く「漢字の話」をさせてもらえる機会を与えていただいた、岸田さん、光部さんを始めスタッフの皆さん、そして、ずっとお付き合いいただいたリスナーの皆さんに、心よりお礼を申し上げます。

「漢字の種」は尽きないですが、耳だけで皆さんにお伝えしようとすると、それなりにわかりやすい字を選ぶことになりますから、話を変えて繰り返し登場してもらう字もいくつか出てきました。また、「しばらくすれば、忘れる」という人間のありがたい習性を利用して、さもはじめて話題にするかのように話すことも出てきました。大事なことは、繰り返し話して、確実に覚えてもらおうと考える先生根性でやっております。

ということで、以前の「ラジオ100回記念」では1~99回までを振り返りましたから、今回は101回目から199回までを駆け足で振り返って(繰り返して)みます。

 

第101回は、2018年10月8日の放送でした(4年4か月前)。タイトルは、「あなたの周りの変わった地名」。ラジオのメッセ―ジテーマに便乗した回でした。京都にも変わった地名がいくつもあると。「不明門通り」と書いて「あけずどおり」、「化け野」と書いて「あだしの」、「車折れる」と書いて「くるまざき」等、海外からの観光客に沸く京都の街のお話でした。

令・金文

2019年に入り、5月には新しい時代「令和」が始まりました。

第112回は「令和の時代」(2019.4.22)というタイトルでした。その「令和」の「令」は、深い帽子をかぶった人が、ひざまずいて神さまの声を聴いている姿からできた字でした。

第124回は「暗闇の謎」(2019.11.25)。「暗い」という字、「闇」という字、その両方に「音」という字が入っているのはなぜか。その「謎」にまつわるお話でした。

蠱・甲骨

そして、2020年「ねずみ年」の始まり。1月中旬、中国から始まった「新型コロナ」のニュースが嫌な予感と共にジワリと日本にも迫ってきました。

第129回「神への祈り」(2020.2.10)

第131回「風に乗ってくる(むし)」(2020.3.9)。3000年以上前の人々も、得体の知れない風に乗ってやってくる恐ろしい虫=「風蟲(ふうこ)」に悩まされた話をしました。空気感染するウィルスと重なりました。以後、社会は一変して、「ウィルスとの闘い」の日々を送ることとなりました。古代の人々が人間の力を越えた得体の知れない「(わざわい)」にどう立ち向かっていたか、そんなことをテーマにする回が増えました。

「第134回」(2020.4.27)は上橋菜穂子さんの「鹿の王」という物語の紹介でした。第141回「うらめしやコロナ」(2020.8.10)、第148回「魔に立ち向かう力」(2020.11.23)、第150回「コロナ禍の祈り」(2020.12.28)・・・どの人も心のどこかに気の重さを抱いたまま過ごした1年でした。

果

明けて、2021年。うし年の始まり。コロナ2年目を迎えました。マスク生活にも自然になれ、コロナだけにかまっていられないという空気も出てきました。生活に制約はあっても、普段の生活に戻ろうとする意識が、ラジオのタイトルにも表れました。

第160回「唐果物(からくだもの)」(2021.5.24)。日本のお菓子のルーツが今も京都で売られているという話でした。

第164回「夏の雲」(2021.7.26)。入道雲に名前がついているという話。雲を生き物のようにとらえていた昔の話。

第172回「人が隠れた漢字」(2021.11.22)。「並ぶ」という字にも人が隠れていました。

正・甲骨

そして、2022年。とら年。

第177回「投果の俗」ちょうど1年前の話。古代中国にも好きな男の人に女の人が果物(梅や(すもも)など)を投げる風習があったことを紹介しました。こんな悠長な話をした直後に、世界はまた重い重い気持ちになりました。ロシアのウクライナ侵攻です。

第180回「正しいということ」(2022.3.8)は、ロシアの侵攻を受けて最初に思ったことです。「正しい」という字の成り立ちには、恐ろしさが潜んでいます。

第191回「九月廿日のころ」(2022.9.26)は、「徒然草」吉田兼好の話。私自身が京都に魅かれて、田舎からでてくることになった高校時代のエピソードでした。

そして、第199回(2023.1.23)は「体操」の話。体を操るように動かすこと。それも怪しくなって、今日200回を迎えました。

 

この4年間は、新年号で始まり、コロナに揺れ、ロシアのウクライナ侵攻に出遭うというなかなかハードな時代でした。これから先、何が待っているかわかりませんが、皆さんがもういいとおっしゃるまでは続けていこうと思います。

先・甲骨

先/甲骨3300年前

生・金文

生/金文3000年前

最後に。本日のメッセージテーマ「先生」の「」は、人が横を向いた全身形から生まれた字ですが、頭の部分に足あとの形が乗っている不思議な字です。「足あと」は歩くことを示します。人よりも「さき」に歩く人のことです。「」は木や草の芽が出てくる様子を表した字。先に生まれた人が「先生」です。偉い人ではありません。

では、201回以降も、よろしくお願い致します。

放送日:2023年2月13日