三条商店街シャッター

JR二条駅から大宮通りを南に5分ほど歩くと東側に三条商店街のアーケード口が見えてくる。三条大宮から堀川三条まで約800mに及ぶアーケード街である。観光客がめあての通りではなく、あくまで地元の日常生活を支える地元密着型の商店街である。しかし、そのなんともいえぬ庶民的な雰囲気がいいのか、最近は観光の穴場にもなり、新しいおしゃれな店が増えてきている。街中にあるアーケード街と違い、朝の時間は車が入ってくるし、自転車などは1日中ひっきりなしに通っている。なかなか、油断できない通りでもある。

朝、堀川通り側(地下鉄二条城前駅から南へ歩いて5分)から大宮に抜けようと歩きかけて、すぐアートな篆書(文)が目に入った。店先の暖簾や看板に古代文字が書かれていることはあるが、シャッターとは予想外である。しかも、四角い枠の中にきちっと16文字収まっている。多少波立っているが、読むのに支障はない。

三条商店街シャッター

「創業万延元年京老舗認定京野菜玉辨」。読んでまたびっくりである。京野菜のお店だということはわかるが、その創業が江戸時代の万延元年(1860年)だという。今から160年も前からこの店は続いている。そんなに長い間野菜を売っている店があるのだ、それなら「京老舗認定」というのもうなずける。それにしても、店名は最後の「玉辨」だろう。これも、不思議な名前だ。

どんな店なのか、早くシャッターを開けてくれないかと待ち遠しくなった。が、まずは仕事が先。終えてからいそいそと確かめに行った。

三条商店街

160年も続く京野菜を売っているお店という期待からするとなんともこじんまりした店だった。かつてどこの町にもあったような八百屋さん。懐かしい雰囲気がただよう。この街が庶民的な町だからこの雰囲気が受け入れられているのだ、きっと。ご主人がおられたので、店の名前のいわれを聞いた。店名は「ぎょくべん」。「辨」は祖先の「べんじろう」さんが始めたから。その家の屋号が暖簾に印されているように「屋根に玉」だったので、合わせて「玉辨」になったそうだ。

そう話をしている間にも、自転車の近所の奥さんがやってきて、野菜を買って行かれた。扱っている商品が新鮮だ。おそらく、店構えではなく、商品の質の良さとお値打ちの値段で仕事をされている店だ。「ずいぶん古い店ですね。」と尋ねると、「うちは160年ほどやけど、隣のはんこ屋さんは創業400年を超えてるから、うちはまだまだ・・・。」そして、隣の店へ行って話を聞いたらと盛んに言われる。京都の人の時の感覚に唖然とする。それにしても、この商店街の奥の深さはなんだろう。そんな気配がないのに、話せば驚きの歴史がわんさと出てきそうなたたずまいの店の多いこと。

「玉辨」さんのシャッターは店が閉まっている時間帯でしか見られない。昼間、見るわけにはいかぬが、お店は日曜日が定休日だそうだ。日曜日、他のお店に寄った折に、是非シャッターを見ていってほしい。

玉辨シャッター古代文字