最・篆文

今回はアフパラ(FM世田谷アフタヌーンパラダイス月曜)のテーマ「最高記録」に便乗して、個々の漢字の成り立ちをお話しします。

最・篆文

最/篆文2200年前

取・甲骨

取/甲骨3300年前

「最高」の「」はとても怖い成り立ちです。この字は少し平たくした「日」と取るの「取」との組み合わせですが、古い文字で見ると「日」の所は「冃(ぼう)」で、その「冃」と「取」との組み合わせです。

「冃」は頭巾(帽子)とか覆うことという意味です。「取」は「耳」と「又」との組み合わせ。昔、戦場で討ち取った人の左の耳を、討ち取った証拠として手(又)で切り落として持って帰って軍功(手柄)の印としていました。そのことを表す字が「取」です。取った耳を頭巾のようなものに入れて一番沢山持って帰った人、もっとも手柄を立てたことを表す字が「取」に「冃」をかぶせた「最」でした。

ということで、「最」は戦場で耳を一番取ったことから「いちばん、もっとも」の意味で用いられるようになりました。

高・甲骨

高/甲骨3300年前

京・甲骨

京/甲骨3300年前

次は「最高」の「」、「高い」です。

古い文字を見ると「高い建物」を指していることがわかります。門の上に屋根の付いた建物があり、真ん中に「口」、願い事を入れた器「 口・篆文(さい)」があります。古く、中国の都市は城壁で囲まれていました。四方に出入り口があり、そこには大きな楼閣(ろうかく)(屋根付きの門)が作られていました。おそらく、都市の外側を見張る「物見やぐら」でもあったので、見上げるように「たかい」建物だったに違いありません。

「高い」はその建物から生まれた字です。おそらく人々が出入りするところですから、邪悪なものが侵入しないように願い事を入れた器「 口・篆文(さい)」が(まつ)られていました。

また、都市への出入り口を表す字には「」という字もあります。この字も都市への出入り口に立っていた門から生まれた字です。

記・篆文

記/篆文2200年前

次は「記録」の「」。「記」は「ごんべん」と「己」との組み合わせ。「ごんべん」は言葉と関係のある部首。「己」は織物の時の糸を巻きとる「糸巻き器」の形から生まれた字。「紀」の元の字です。

糸を順序正しく糸巻きに巻き取ることを示す字です。それを「言葉」に移して順序正しく整理して「書きとどめる、しるす」ことを「記」というようになります。

録・篆文録/篆文2200年前

最後に「記録」の「」です。「録」は「かねへん」と「(ろく)」との組み合わせ。

「かねへん」は金属に関係する部首。「(ろく)」は(きり)のような道具で木に穴をあけ、木くずが飛び散る様子からできた字です。それを木ではなく青銅のような金属に刻印する=刻み付けることを「録」といい、「ほりつける、しるす」の意味となります。言葉を刻印するように順序正しく書き記すことを「記録」といいました。

「最高」は文字通り「最も高い」こと。「記録」は「言葉で刻み記すこと」です。二つが合わさって本当に様々な「最高記録」が刻まれます。

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放送日:2019年10月14日