明けましておめでとうございます。今年も恒例の干支の話からです。
甲/甲骨3300年前 |
甲/金文3000年前 |
甲/篆文2200年前 |
今年は十干十二支の第41番目「甲辰(こうしん、きのえたつ)」の年にあたります。
「甲辰」の「甲」は亀の甲羅の形から生まれた字です。最初の形(甲骨)は、漢数字の十に似た形をしていました。縦線と横線が交差した形です。この十字の形は、亀の腹の甲羅の中央にある縦に貫く縫い目のような線とこれと交わる横の線を表しています。3000年前の金文では甲羅の輪郭が加わり、さらに2200年前の篆文では、甲羅の上半分の輪郭になり、現在の「甲」の字形に近い形となりました。
堅い亀の甲羅から始まった字なので、よろいで武装することを「甲」と言い、「よろい、かぶと」の意味となり、甲羅、甲冑、甲虫などと使います。「甲」は占いを行った亀の甲羅でもあり、十干(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)の第一番としての役割も果たしています。
辰/甲骨3300年前 |
辰/金文3000年前 |
辰/篆文2200年前 |
次は「甲辰」の「辰」の字。こちらが「たつ年」の「たつ」=「龍」を表しますが、もともと龍とは関係がありませんでした。干支に動物が割り振られたときに「辰」に「龍」が割り当てられたということです。
では、「辰」とは何でしょうか。「辰」の古代文字は不思議な形をしていますが、「はまぐりなどの貝が足を出して動いている形」からできたと言われています。それで、「動く」の意味を持つ字となりました。
振/篆文2200年前 |
ですから、「辰」に「扌(てへん)」をつけると「振」。手を動かすことを言い、「手を振る」・「三振」・「振動」など「ふる、ふるう」の意味で使われます。
娠/篆文2200年前 |
「女へん」をつけると「妊娠」の「娠」。赤ちゃんがお腹の中で動く様子が浮かびます。
震/篆文2200年前 |
そして、「雨かんむり」をつけると「地震」の「震」。「震」はもともと「雷のとどろき」を示すでしたが、雷のとどろきによって「ふるう、ふるえる」の意味となり、のちにすべてのものが「ふるう、ふるえる」の意味となりました。
「辰年」になった途端に起こった今回の能登での大地震。まさかとは思いましたが、巡り合わせの恐ろしさを感じてしまいました。
正月早々つらい幕開けとなりましたが、1年を通して見れば、きっと甲の字が持つ「よろい、かぶと」のような堅いイメージと「辰」が持つ動くイメージが重なって、必ず堅い殻を破って新しい何かが動き出す、そんな未来につながる1年になると信じたいです。
さて、「辰」に割り当てられた動物は「龍・竜」でした。その「龍・竜」のお話は次回にしたいと思います。
では、今年もよろしくお願い致します。
放送日:2024年1月8日
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