メダルラッシュに沸いたリオデジャネイロオリンピックでしたが、今回はそれに便乗して「金・銀・銅」にまつわる漢字、「金」について取り上げたいと思います。
はるか昔の中国でも「金・銀・銅」は、やはり貴重な鉱物でした。量が少ないこともありましたが、何よりも人を引きつける魅力を持っていたからでした。「金」も「銀」も昔から装飾品として美しい輝きを放っていました。「銅」は「鉄製品」が登場するまで金属の王様として様々な製品を生み出しました。
もともと柔らかくて赤っぽい色をしていた「銅」に「錫」という金属を混ぜた「青銅」が登場してきてからは、強度が増して「武器」や「青銅器」、のちには貨幣(お金)の原料としても使われました。(ちなみに銅メダルをブロンズメダルというのは「青銅」からできているからです)
青銅器は「青銅」の塊を高温の火で溶かし、土を焼き固めた鋳型の中に流し込んで作られました。「金」という字は、その鋳型から取り出した金属の形から生まれた字でした。
金/金文3000年前 |
王/金文3000年前 |
三千年前の古い「金」の文字を見ると、今の字とは違って、左側に小さな塊が二つあり、右側に「全体」の「全」に似た字が書かれています。左側は材料である青銅の塊、右側が鋳型から取り出した金属の形です。「全」という字の中に王様の「王」があるように、「王」はあの足柄山の金太郎が手に持つ「鉞」の形からできた字です。「鉞」こそ王様の力の象徴とされたからです。「金」という字は最高の力を持つ「鉞=王」を鋳型から取り出した形です。字形から言っても、まさに「王者」にふさわしい字だといえませんか。
現在の「金」という字は、横についていた二つの青銅の塊が「全」という字の中に入り込んだ形です。原料となった二つの青銅の塊は、「」として「金」の字の中に残ったのです。
ですから、三千年以上前の古代中国では、「金」は「青銅」のことをいう字でした。青銅器の原料として使われた「青銅」が「金」と呼ばれていました。私たちが知っている「青銅」製品は緑がかっていますが、時間の経過とともに「緑青」が出てきて緑っぽくなったものです。出来上がったばかりの当時の青銅器は、「金色」に輝く美しい器だったといわれています。「金」にも劣らない輝きがあったのかもしれません。
のち、「銅」の字が作られると、「金」は「黄金(ゴールド)」を表す字となりました。また、「金属の総称」の意味でも使われるようになり、「金へん」として多くの金属関係の漢字を作る要素となりました。
銅/篆文2200年前 |
銀/篆文2200年前 |
新しくできた「銅」という字と「銀」という字も左側に「金属」を表す「金へん」がつき、右側は「同」と「艮」という「音」を表す役割のみで用いられている字です。
「金・銀・銅」を日本の古い言い方でいうと、「金」は「こがね」、銀は「しろがね」、銅は「あかがね」(ちなみに鉄は「くろがね」)と言いました。漢字で書けば、「黄金」・「白金」・「赤金」です。それぞれの金属の色の特徴を活かした言い方でした。(現在、白金はプラチナのことを言いますが、古くは銀のことでした)日本流に書けば、「黄金メダル」、「白金メダル」、「赤金メダル」。色の違いはあっても日本語の古い言い方でいえば、どれも「金メダル」です。
今回は余韻冷めやらぬリオオリンピックのメダルにちなんだ漢字を取り上げてみました。
放送日:2016年8月22日
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