故・金文障・篆文

私にとって「故障したら困るもの」。ぱっと思いつくのは、一つ、眼鏡。二つ、PC(パソコン)。三つ、スマホ。やはり、「故障」というと浮かぶのは、電化製品・機械系ですね。眼鏡は「故障」ではなく、「壊れたら困るもの」ですね。パソコンは、故障したら毎日が成り立ちません。スマホは「故障」より「どこにあるのかわからないとき」の方が心臓に悪いですけど。

ということで、アフパラの今日のテーマ「故障したら困るもの」に便乗して「故障」の「」と「」にまつわる漢字を取り上げます。

故・金文

故/金文3000年前

「故障」の「」は、「(交通)事故」とか「故意(わざと)」という熟語や「故事成語」というときに用います。「よくない」という意味合いの時と「古い」という意味合いの時がありそうです。「故」は「古」と「攵(ぼく)」からできています。「古い」という意味合いは「古」が入っているからです。「攵」は、手で棒を持つ形からできた字で、何かをたたこうとするときの動作です。「攵」は牧場の「牧」にもありますが、「牛」を鞭でたたいて牧場の柵の中に入れるようなイメージからきているのと同じです。物をたたいたり、壊そうとするときの動作ですから「よくない」意味合いで用いられるのです。

古・甲骨

古/甲骨3300年前

ところで、「」は、願い事を入れた器=「 口・篆文(さい)」と「(たて)」とを組み合わせた字です。盾は今では漢数字の「十」のようになっていますが、古い文字では「 盾・パーツ(盾)」の形をしています。願い事を入れた器=口・篆文 の上に盾を置いて願い事を入れた器を守っているのです。盾で守られた願い事はいつまでも守られているので、それを時間の経過として考え、「ふるい」という意味を持つようになりました。

事故の「故」は、その「盾で守られた器」を棒でたたこうとしているのですから、その願い事をつぶそうとしているのです。ですから「よくないこと」が起こることになるし、「わざと」つぶそうとしているという意味にもなるのです。

固・篆文

固/篆文2200年前

では、盾で守られた器=「古」が叩き壊されないようにするにはどうするか。その器の周りをさらに四角く囲って守りました。その字が、強固に守るというときに用いる「」という字です。「古」をさらに四角く囲って守っています。だから壊せないくらい固いのです。

障・篆文

障/篆文2200年前

次は「故障」の「」です。「障」は「阝(こざとへん)」と「章」との組み合わせです。

「阝(こざとへん)」は、神様が天から降りてこられるときのはしごの形からできた字です。「章」は、この字の場合「しょう」という音を表わすとともに「ふさぐ、ふせぐ」の意味で用いられています。ですから、神が下りてくる神聖な場所を防ぎ守るという意味となり(「安全保障」で用いる「障」)、やがて、「ついたて」のように「(さえぎ)り、隔てる」という意味へと広がり、「障子」という字に用いるようになります。「遮り、隔てる」ことは「妨げる・さしつかえる」という意味にもなっていき、「支障をきたす」とか夜更かしは「体に(さわ)る」といったときの「障る」という字にこの字を用いるようになりました。

「ふせぐ」という意味からいろいろ枝分かれして意味の広がりが起こった字です。「故障」という字に用いられるときの「障」は、「さしつかえ、さしさわりがある」の意味で用いられています。

以上のような成り立ちから、「故」と「障」の二つを重ねて「よくないこと、さしさわりがあること」を「故障」というのです。故障したら、なかなか元に戻らないのは「よくないこと」が二重になっているからです。

ですから、故障は手ごわいです。くれぐれも電化製品は大切に扱いましょう!

放送日:2020年9月14日