3月が別れの季節なら、4月は新たな人を迎える季節です。「歓迎」は、文字通り「(人を)歓び迎える」意を持つ言葉です。
/金文3000年前 |
歓・歡/篆文2200年前 |
その「歓迎」の「歓」は、古くは「歡」と書きました。「歡」は「(かん)」と「欠」とを組み合わせた字です。「」の古代文字は、羽角(うかく:耳のような飾り羽)を持つミミズク(フクロウの仲間、白川先生はコウノトリとも書かれている)を表しています。古く、神聖な鳥として鳥占いに用いられました。願い事を入れた器=口(さい)を置いて、鳥占いによって神意をはかることを示しています。後、人が声を出して祈る姿を表わす「欠」を加えて「歡」の字ができました。ですから、「歡」は、祈りが通じて神様に願いが通じたことを「よろこぶ」ことを表しました。
観/篆文2200年前 |
勧/篆文2200年前 |
鳥を使って、神への願いごとが聞き届けられるかどうか、神意を見る(はかる)ことを、「(かん)」に「見」を加えて、「観察」の「観」と言います。
春先、農耕に関する願い事を神様に行なうときは、田を耕す「耒」を表わす「力」を加えて「勧」としました。「勧」は神の意向を受けて、農作業を「すすめる、いそしむ」の意味で用いられました。白川先生は、おそらく、観察の「観」も、歓迎の「歓」も、農作業に関わる「鳥占い」から生まれた字ではないかと考えておられます。
そう考えると、春先に鳥占いで、「耒」を使って豊作祈願を行い(勧)、途中、穀物の出来具合を見守るように「観察」し、秋、豊かな実りを迎えて神に感謝し、「歓ぶ」というのが、「(かん)をパーツに持つ一連の字のつながりだといえます。
/甲骨3300年前 |
迎/篆文2200年前 |
次は、「歓迎」の「迎」です。「むかえる」と訓読みします。「辵(しんにょう)」と「 (こう)」との組み合わせです。「 (こう)」は、二人の人が対面している形から生まれた字です。(古代文字では少し形がわかりにくいですが)「対面」を水平方向にすると、人がもう一人の人のもとに向かってくる形です。待っている人はその人を「むかえる」ことになります。道(辵)で、やってきた人を「むかえる」のが「迎」です。
仰/篆文2200年前 |
抑/篆文2200年前 |
その対面の形を、水平方向ではなく垂直方向にすると、上下になります。下の人が上を見あげると「あおぐ」。「仰ぐ」になります。上の人が下を見下ろすと「おさえる」。「抑える」になります。
対面の方向が水平の場合は「迎」。上下の場合は「仰」、「抑」となります。この3つの字とも、人が対面する形から生まれた一連の字です。
歓迎の「歓」は、神意が通じたことの「よろこび」を、人に会えた「よろこび」に広げたもの、「迎」は文字通りやってくる人をむかえるという意味です。wel(喜び)・come(来る)という言葉があるように、「人がやってくるのを歓び迎える」のは、洋の東西を問わず同じだったのですね。
コロナ下にあっても、四月は、様々な人々が新しい生活を始める季節です。
酒宴は開けなくても、新しい人との出会いを心から「歓迎=welcome」します。
願はくば、一日でも早く、「歓迎の宴」が開けますように。今は、我慢。
放送日:2021年4月12日
2021年4月20日 at 3:51 AM
ゴット先生はじめまして。このサイトを知ったきっかけは「虹」の漢字の組み立てを調べたのがきっかけです。虹の虫が竜で風や空とつながるの楽しく拝見しました。他の記事も楽しく拝見させていただきます。ありがとうございました。
2021年5月2日 at 9:13 PM
ありがとうございます。時間があったら、またお立ち寄りください。