今回は「心」にまつわる漢字を取り上げてみます。
3000年以上前の古代中国の人たちは、人の「心」は心臓にあると考えていました。
「心」の古代文字は心臓の形から生まれた字です。
心/篆文2200年前 |
心/簡牘文字2000年前 |
その「心」がパーツとして入った字が小学校で習う漢字だけでも、20個以上あります。
今日はその中から4つ紹介します。
思/篆文2200年前 |
最初は「思う」の「思」です。「思」の心の上には「田」があります。「田」は何でしょうか。「田んぼ」の「田」ではありません。古代文字の「田」は、「頭の形」を表しています。頭の中の脳みそを表すという人もいます。
「思」の中には頭と心があります。「おもう」ということは、頭と心の働きだと考えているのです。頭で考えたことを心が感じるということでしょうか。たしかに、頭がおそろしいと思うと心臓はどきどきしてきます。「思」は、頭と心がつながっていることをとてもうまく表した字です。
念/篆文2200年前 |
次の字は「念ずる」の「念」です。「念」の「心」の上には「今」があります。「今」は何でしょうか。「今」という字は、古代文字を見ると「蓋」の形をしています。この蓋は上から覆う蓋ではなく、注ぎ口にスポットはまる内蓋の形です。心の上に蓋をして心の奥深いところで考えることを表します。外から見えなくても心の中で深くおもう。それが、「念ずる」です。
悲/古文2500年前 |
次は「悲しい」の「悲」です。「悲」の心の上には「非」があります。「非」は何でしょうか。古代文字も現代の字も、同じものが左右に分かれた形をしています。何が左右に分かれているのか実はよくわかっていませんが、背中合わせにそっぽを向く形です。もしそれが人だとしたら、二人の心が反対を向く形です。そうなら、悲しいですよね。「悲」が「かなしい」気持ちを表すのは、背中合わせに反対を向く形があるからです。
息/篆文2200年前 |
最後は「息」です。「息」の心の上には「自分」の「自」があります。「自」は何でしょうか。古代文字を見てもほぼ同じ形をしていますが、これは人の「鼻」を表しています。もともと、鼻を表す字は「自」でした。その自が、自分の「自」を表すようになったので、「鼻」という字が新しくできました。なぜ鼻を表す「自」が、自分の「自」という字になったかというと、3000年以上前の人々も自分の鼻を指でさして「自分」と言っていたからです。3000年以上前の人たちと同じ仕草を現代の私たちもしています。
ところで、息は生理現象ですから心とは関係がありません。ですから、「心」がつかなくてもいいようなものですが、「息」に心がついているのはなぜでしょうか。それは、息が心を表すと考えていたからです。今もそうですが、例えば、「ため息」。がっかりしたときなど、ため息をつきますよね。息に心が現われているのです。たしかに、「息が合う」、「息をころす」、「息づまる」、「息まく」等など息のつくことばの裏には「心」が見えてきます。
「心」がつくことばの中をのぞいてみるといろいろなものが見えてきます。まだまだあります。心は百面相。いろいろな心模様に「漢字」があてられているからです。また機会があれば、別の心も探ってみたいです。
放送日:2023年3月13日
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