紙・篆文

今回もメッセージテーマ「ペーパー」に便乗します。

中国で紙が発明されたのは今から2200年ほど前のことです。漢字ができたのが、今から3300年~3400年前ですから、紙の登場はそれより1000年以上遅かったことになります。漢字も筆もずいぶん古くからあったことから思えば、紙の登場は比較的新しいのです。

では、紙がなかった1000年の間は、一体何に文字(漢字)は書かれたのでしょうか

甲骨写真

①甲骨

青銅器

②青銅器

木簡

③木簡

絹帛書

④絹帛書

一番初めは、亀の甲羅や獣の骨に刻まれました。それを甲骨文字と言います。

その後、青銅の器に鋳込まれた金文が登場し、その次に木や竹を細く短冊状にして、ひもで綴った「木簡・竹簡」(簡牘文字)に書かれました。この素材は書きやすかったのですが、長くなると分厚くなって持ち運びが不便、重くなるのが弱点でした。それを補ったのが、絹の布地に書く帛書(きんしょ)でした。とても、軽い素材でしたが、いかんせん、超高価でした。とても、文字を普及させる素材にはなりませんでした。

そこに、登場してきたのが「」というわけです。ここまでにざっと1000年がかかっていました。1000年かかりましたが、「紙」の発明は画期的でした。以後、2000年以上「紙」は改良を加えられつつ、現在まで使われ続けているわけですから、中国で生まれた大発明に違いありません。その上、紙は再生可能なので、古くから再生して活用されていました。紙が手に入りにくかった時代には、とくに重宝されていました。

ところが、そんな画期的な紙も最初はあまり受け入れられなかったそうです。やはり、木簡、竹簡、絹と比べれば、紙の質も悪く、安っぽい素材だと思われていたようです。その紙が徐々に世の中に広がっていくには、3世紀西晋の時代まで待たなければなりませんでした。

これがざっくりとした紙の誕生までの流れですが、では、紙を最初に作った人は誰でしょうか?

蔡倫

蔡倫(想像図)

これまでは、後漢(AD25年~220年)時代の「蔡倫」という役人がAD105年に作ったと言われてきましたが、実際はそれより300年ほど前の時代の人たちが始めていたと言われています。現在では、その誰かわからない人たちが始めた紙の作り方を改良して、植物の繊維を使った紙の製法を確立させた人物が後漢の蔡倫だということになっています。

紙・篆文

紙/篆文2200年前

シ・かみ

帋(シ、かみ)…この字も紙の字として使われてきた。

では、その一番初めの人たちはどのように始めたのでしょうか。

現在、私たちが使っている紙(洋紙)は、木材パルプを原料にしていますが、最初の紙は糸くずや、綿くずなどから思いついたと言われています。洗濯をすると服などから糸くずや綿くずが底に残ることがあります。そのくずを取り出して乾かすと薄いシート状になることを誰かが見つけたのです。それが紙づくりのヒントになったと言われています。「ぼろ布」や「麻くず」をほぐして水に入れ、すきあげる方法を見つけたのです。木の皮や植物の繊維を材料にする前に、糸からできた布をほぐして「紙」の材料として使ったのが始まりでした。それで、「紙」の字が「糸」へんなのです。

その中国で発見された「紙」づくりの方法が日本に入って来たのは、聖徳太子時代の7世紀初め頃だそうです。そして、その後、日本で改良され、(こうぞ)やミツマタを原料とした紙=和紙が作られるようになりました。9世紀に中国に行った留学生が和紙を持っていったところその品質の良さを中国で褒められたというエピソードもあります。

ものづくりが日本のお家芸なのは、すでに奈良時代ごろからだったんですね。

今は「洋紙」全盛の時代ですが、1400年もの伝統を持つ和紙作りです。日本の各地に残る和紙づくりの里を、いつまでも守っていただきたいと願っております。

放送日:2023年6月26日