府立図書館プレート

前回、京都府立図書館についての話をしたがもう少し続けよう。

「京都府立図書館」には図書館設立にかかわる貴重な銅板のプレートが残されている。今は一般に公開されてはいないが、横幅90センチはあるだろうか、思った以上に大きくて立派なプレートである。

文字はすべて古代文字で書かれている。横書きではあるが、三千年前に作られたプレート板が目の前に出現したような錯覚を覚える。

プレートには一行目に「明治三十七八年戦役記念」とある。明治37~38年に起こった「露西亜」との戦争(日露戦争)の戦勝記念としてこの地に建設された図書館であることを伝える。

二行目に「京都府立」。建物の外正面にある銘板には「府立」がなく「京都図書館」と書かれているだけであったが、この一行で府立の図書館であることがわかる。

三行目は図書館の名称である。外側にある銘板と同じ「京都図書館」だが、字体が若干違う。こちらは青銅器に鋳込まれた文字、「金文」を意識したものと思われる(篆書体より約八百年古い字体)。

四行目に「起工」した年月日。五行目に「竣工」した年月日が刻まれている。字が小さいのでわかりにくいが、この図書館の建設は、明治何年何月何日から明治何年何月何日まで行われたか読み取れるだろうか。

数字と「年」を表す古代文字は以下の通り。三千年以上前に使われた数字である。

一

二

三

四

五

六

七

八

九

十

年

一から四までは算木(計算をする時の棒)を横に並べた形。五は交差させた木の(ふた)。六はテント。七は骨を刀で切る形。八は左右に物が分かれる形。九は龍を表す。十は算木を立てた形。年は、稲の形をした被り物をかぶって豊年祈願の田の舞をする男の姿。

現代の数字を当てはめてみると、

四行目:明治三十九年十一月二十五日起工
五行目:明治四十二年二月二日竣工

と読める。完成までにほぼ二年二か月かかったことになる。

漢字が生まれて間もない西周時代(紀元前1046年~紀元前771年)に作られた青銅器には、内側の底や壁に文章(金文)が鋳込まれている。作製した由来が書かれたあとに、「(この青銅器を)子々孫々まで永く宝として用いよ」と鋳込まれることが多い。

このプレート板にはそのような文字はないが、この板に込めた思いは古代の人びとと同じに違いない。どうかこの図書館を「子々孫々まで永く宝として用い」てほしい、と。どんな時代にあっても、京都府民の宝として、常にその在り方を追及しつづける図書館であってほしいと願う。