冬

今日は冬至、1年で一番昼が短い日です。※この回の放送日は2014年12月22日でした。

三千年以上前の中国の人々も、日時計を観察しながら一年で一番昼が長い日、短い日、そして昼夜が同じ「春分・秋分」は知っていたと言われています。なかでも、一番昼の短い冬至の日は、日の当たるすべてのものが尽きて、再び新たな復活を迎える日と考えられていました。ですから、漢字を生み出した商(殷)や周の人々は、この冬至の日を「年の始まり」としていたといいます。

陰の気が晴れて陽の気が戻ってくる一陽来復の日。三千年以上前の人々も、この日を境に「新たな」気持ちで「年の初め」を迎えていたのですね。

そこで、今日は「冬至」にちなんで、「冬至」の「トウ」、「ふゆ」という字の話をしたいと思います。

冬という字は小学校2年生で習う漢字ですが、成り立ちを口頭で説明するのは意外に難しいのです。

冬の一番古い字の形は、3300年前の亀の甲羅に刻まれた甲骨文字に登場します。

そのときの形は、現在の「冬」の字の下にある「てんてん(ふたつのてん)」がない上の部分(カタカナのクの字に交差するように左から斜めに線をはらった形)だけでした。

その古代文字を再現してみます。

①一本のひもの両端のそれぞれに結び目をつけてこぶを作ります。

②こぶが二つになったところで、ひもの真ん中を人指し指で下から折り目を付けるよう に持ち上げます。

③するとこぶになった下の端のほうがすこしひろがり、「ヤジロベー」を作ったような形 になります。(広がらない場合は、工夫して広げてみてください)

それが、冬という字の最初の形でした。こんな形→冬(冬・甲骨 3300年前)

さて、これは何を表しているでしょうか。これがわかれば冬の字は解けます。ひもを直線に戻すと、両端に結び目がある形です。

わかりましたか。この字の端にある丸いものは、着物を縫うとき、針仕事をするときの結び目を表しています。縫い物は結び目に始まり結び目で「おわり」ます。

冬はその「おわり」を表す字なのです。それを季節に当てはめると、春・夏・秋と季節がめぐり、一年の最後の「おわり」の季節「冬」を迎えます。それでこの字が一年の終わり の季節を表す「冬」の字となりました。

冬がもっぱら「冬」の意味で使われるようになったので、「糸へん」をつけて新たに「終」という字を作りました。 「終」に冬があるのは「冬」に「おわり」の意味があるからです。

現代の冬の字はその結び目の形の下に二つの点をつけています。その「てんてん」こそ、 古い文字を見ると「氷」の形なのです。氷の形をつけて「冬」を表す字となりました。そ ういえば、寒いという字にも「てんてん」があります。やはり、「氷」を表しているのです。

「終結」ということばがあります。戦争が終結する。難しい交渉が終結する。「おわる」 という意味で使われますが。文字通り「結んで終わる」=冬の最初の形をそのまま熟語に している字なのです。

今年はこれで「ふゆ」(=おしまい)です。次回は1月5日に「心新たに」お耳にかかり たいと思います。

放送日:2014年12月22日

古代文字

冬 (冬・甲骨 3300年前)

冬2(冬・篆文 2200年前)

終(終・篆文 2200年前)