北大路堀川東南角にある京菓子「游月」の栗子餅である。器の包み紙にデザイン化された篆書体の文字が描かれている。なんともかわいらしい文字である。丸い器の中には、小さな白玉団子のような餅が三つ、その周りを栗あんが包んでいる。甘さ抑えめの栗あんが餅と絡み、お茶と一緒にいただけば、小さな秋の恵みが口いっぱいにひろがる一品である。
古代文字の「栗」は愛嬌のある字である。古代中国の人びとも栗の特徴を出すために、木に鈴なりになっている栗を「いが」の形で表している。
甲骨・金文は「いが」を持つ丸い形の実が三つ、鈴なりになっていることを示す。篆文(下図参照)は木の上に実を一つ代表させた形となっている。
いがの中から栗の実が現れるところは、いがから子供が飛び出すようである。「栗子」とはまさにそのことを指した名称だろうか。古代文字の「子」は、大きな丸い頭と両手を挙げた子供の姿で示す。いつ見ても赤ちゃんがそこにいるような象形である。
餅は、日本ではもち米を蒸してついた「もち」をいうが、中国では麦粉をまるめ、蒸して作った餠をいう。餅の古代文字は「食へん」に「并」と書く。この場合、并は音を表すパーツとしてのみ使われているのだが、古代文字を見ると二人が相前後して並び、それぞれの足をひもでつないだような形である。運動会での二人三脚を思い浮かべる形象で「ならぶ、あわせる、ひとつにする」などの意味で使われる。合わせてひとつにすることを「併合・合併」という。
古代文字
外部リンク
- 京菓匠 游月 ※季節によって取扱商品が異なるようです。
コメントを残す