竈1

北野の天神さんのご本殿の北東、東門を入った北側の鳥居の上に「竈社かまどしゃ」の扁額へんがくが揚げられている。古くから台所の守り神、火の神としてまつられてき た小さな神社の、その古色然とした額はそばにある梅の古木に負けぬ味わいがある。いつごろ掲げられた額か定かではないが、奥の「一の鳥居」はあの明智光秀が寄進したものとされ裏側に明智の銘も彫られている。

竈社1

(かまど)」という字はすでに漢字が生まれる草創期のころからあり、3000年前の青銅器に鋳込まれている。煮炊きをする人々の生活の煙は煙突を通って天に住む 神のもとへ届けられる。年末には一年間の家族の暮らしぶりが煙を通して天の神に報告されると信じられていた。それゆえ、無駄遣いをした家族は神様の怒りに触れないか恐れたに違いない。竈の力が現代にもあればそわそわする人はさぞかし多いだろう。金文(青銅器に鋳込まれた文字)のkamado-entoは竈の上部の空気抜けの穴、下部はよくわからない形である。蛇が頭をもたげているようにも、あるいは竈の中で激しく燃える炎のようにも見える。

「社」の一番古い形はtuchi。土の字の最初の形である。土を盛り上げて土地の神様をまつる場所を示す。のち左側に神への供物を載せる台〈テーブル〉である示を加えて社という字となった。

 

kamado1(金文) kamado2(篆文)
yashiro2(甲骨) yashiro1(篆文)

 

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