忖・篆文 度・篆文

最近マスコミをにぎわしている言葉の一つが、「忖度(そんたく)する」ではないでしょうか。「心を()(はか)る」という意味の「そんたくする」が、「忄(りっしんべん)」に「寸」と、温度の「度」という字を書くということを、今回の話題で初めて知ったという方もおられるかもしれません。

そもそも、「(そん)」は学校で習わない字ですし、「()」を「たく」と読むのもなかなか思い浮かばないかもしれません。(相撲の「支度(したく)部屋」などという時の読み方ですが・・・)

忖・篆文

忖/篆文2200年前

尺・篆文

尺/篆文2200年前

その忖度の「」はどういう成り立ちでしょうか?
部首は「忄(りっしんべん)」。「心」を表しています。(つくり)の「寸」は、古代文字では「手の形」をしている字で、手の指一本分の横幅を表す字でした。ですから、一寸、二寸という長さの単位(現在は一寸は3.03㎝)を表す字になりますし、「寸法」と使うように「長さ」を表すことから、「はかる」の意味を持つようにもなりました。従って、「心」と「はかる」との組み合わせですから、「(そん)」はこの字だけで「心をおしはかる、思う」という意味となります。(尺も手を広げた形。親指と中指とをいっぱいに広げて、下向きにした形。尺の上部は手首の部分、下部の八の部分が両指を広げた形。寸の十倍。現在は30.3㎝)

度・篆文

度/篆文2200年前

席・篆文

席/篆文2200年前

では、「」はどうでしょうか。
「度」の成り立ちは、意外かもしれませんが「欠席」の席の上側の部分+「又(手の形)」との組み合わせからできています。「席」は字の中に「巾」という字があるように、建物の中に「布・(むしろ)」を敷く形です。ですから、「度」は手で敷物の「布・(むしろ)」を広げる形で、蓆の大きさを物差しとして長さを測ることをいいます。それで、「はかる、ものさし」の意味となりました。「ものさし」の意味があることからご法度(はっと)(おきて、法律)・制度(きまり、おきて)のように用います。

「忖度」という熟語は、構成する二つの字とも「はかる」という意味を持つ字の組み合わせでした。どうりで、心の奥にしまわれた思いを二重におしはからないといけないわけですから、外からはなかなか証明できないわけです。

 

さて、今日は、「はかる」という意味を持つ字を取りあげましたので、「はかる」と訓読みする他の字も取りあげてみます。
「はかる」と読む字をどのくらい思いつきますか?

以下は「はかる」と読む代表的な字です。

計る
計・篆文(篆文)
タイミングをはかる 将来をはかる/計算 計画 推計
新しい字、古い字がなくてルーツがわからない字。「考えて数えること」

 

測る
測・篆文(篆文)
角度をはかる、熱をはかる/測定 推測 観測
初め、水の深さをはかることをいう(氵がついている)。のちすべて「はかる」をいう。則は鼎に刀で契約事項を刻むことをいう。その基準にあっているかどうかを「はかる」

 

量る
量・甲骨(甲骨)  量・篆文(篆文)
分量をはかる、相手の気持ちをはかる/軽量 分量 量産
上に注ぎ口のついている大きな袋の形。下の「土」はおもりの形。注ぎ口の付いた袋に穀物を入れて分量をはかるところから「はかる」の意味となる。

 

図る
図・篆文(篆文)
合理化をはかる、解決をはかる、便宜をはかる/意図 図書館 版図
穀物倉庫の所在地を記入した農園の「ず、ちず」の意味から「え、えがく」の意味となる。穀物倉庫はどこに置くのかあらかじめ設計して設置するので「計画する、はかる」の意味となる。

 

謀る
謀・篆文(篆文)
暗殺をはかる、悪事をはかる/無謀 陰謀 謀反 謀反
某はえつと木との組み合わせ。木に曰をつけて神にささげ神意をはかるという意味で用いる。「はかる、はかりごと」相談する、計画する等の意味で用いる。

 

「はかる」もバリエーションの多い字です。

放送日:2017年3月27日