冬

今日(12月25日)は、イエス・キリストの誕生日ですが、日本にも25日が誕生日の有名な学問の神さまがおられます。「天神さん」で有名な菅原道真。平安時代の西暦845年6月25日(旧暦)生まれ。しかも、亡くなった日も西暦903年2月25日(旧暦)で、「25日」ととても深い(えにし)の方です。

ですから、菅原道真を(まつ)る京都の「北野天満宮(北野の天神さん)」では、毎月25日に天神祭りが行なわれ、境内では「天神さん」の縁日が開かれ、多くの人々で賑わいます。中でも、誕生月の6月の夏越(なごし)の天神さんと亡くなった月、2月の梅花の天神さん、そして、1年の最初の「初天神」、12 月の「終天神(しまいてんじん)」は、とりわけにぎやかに開かれます。

その「終天神」の日が、今日、12月25日というわけです。京都の街では、12月25日は「クリスマス」とともに「天神さんの日」でもあるのです。その「天神さんの日」が終わると京都の街もいよいよ本格的に年越しの準備に入っていきます。

そもそも、「師走」は「師が走る」と書き、偉い人が慌ただしく走り回ることからそういわれるようになったと思いそうですが、そういうことではなく、日本語では「しはす」。「し()てる」、「物事がすべて終わる」という意味を持つ言葉です。1年の終わりの月を表します。

「終天神」の「しまい」には終わるという字を当てます。「終」は、「しまい」だけではなく「はて」と読むことがあります。京都には「上と終」と書いて「上終町(かみはてちょう)」という町名がありますし、奈良にも「京と終」と書いて「京終(きょうばて)」という地名があります。終わりは「はて」でもあります。

冬

冬/甲骨 3300年前

終

終/篆文 2200年前

その「」の一番古い文字(甲骨文字)は、実が2つついた果実のようです。(サクランボとこどもは言います。)実は、果実に似ていますが、果実ではなく、糸の結び目を表す字だと白川先生はおっしゃっています。縫物は、結び目を作ってはじめ、結び目を作っておわる。それで、おわることを表す「冬」という字の最初の形ができました。

後に、その「冬」が季節の「ふゆ」を表す字として使われるようになり、「おわる」という字を新たに作ることとなり、もともとの「糸」という字をつけて「終わる」という字にしました。果実のように見えたのは糸の結び目でした。ですから、「しまい」「はて」と読むのもなるほどとうなずけます。

さて、終わりを表す字には他にどんな字があるでしょうか。

結・篆文

結/篆文 2200年前

吉・金文

吉/金文 3000年前

すぐに思いつくのは、糸つながりの「結ぶ」の「」。「むすびにあたりまして」と言うと「終わりにあたって」の意味です。その「結」は「糸」と「吉」との組み合わせです。「」は願い事を入れる器( 口・篆文 サイ)の上に小さな(まさかり)を置いて、器を守ることを表します。器の中に入れられた願い事も守られ続けることになるので、それは 「よいこと」=「吉」の意味で用いられるようになりました。その「よいこと」を糸でしっかりむすんで閉じ込めるのが「結」です。ですから、お祝いの席では「おわり」を避けて「結び」を使うのです。

了・篆文

了/篆文 2200年前

卒・金文

卒/金文 3000年前

二つ目は「終了」の「」。白川先生は「了」も糸と関係のある字だと言われています。「糸がもつれて、ここで終わるので『おわる』の意味となる」と『常用字解』に書かれています。他の説では、「子どもがすっぽりくるまれた形に(かたど)り、まとめる、おわる意」とか「物がもつれてぶらさがるさま」などがありますが、もう一つ成り立ちがすっきりしない字です。とはいえ、「完了」・「満了」とも使いますから「おわること」を表しているのは間違いなさそうです。

最後に、「卒業」の「」を浮かべられる方もおられるかもしれません。この字も「おわり(おえる)」の意味で使われますが、もともとの成り立ちは「亡くなった人の衣の上に刀を置く形」からできた字なので、終わり(終える)といっても「亡くなって終わる(終える)」の意味が強い字です。

まだまだ「おわる」の意味を持つ字はありますが、とりあえず、今回は4つ紹介させていただき、今年の「おしまい」とさせてもらいます。

年が明ければ、1月、「睦月(むつき)」。「生む月」。また新たな年が始まります。皆様、よいお年をお迎えください。

今年も1年、お聴きいただきありがとうございました。

放送日:2023年12月25日