結・篆文

10年近く続いたFM世田谷月曜日の「アフタヌーンパラダイス」での「漢字成り立ち教室」のコーナーも、今回で「結び」のときを迎えました。

2014年の5月に始めた時は、こんなに長く続けるとは思ってもいませんでした。ですから、私の「ブログ」もラジオのコーナー名「漢字成り立ち教室」ではなく、「京都古代文字案内」のままにしていました。いつのまにか、ラジオで話した記事のほうが圧倒的に多くなっていました。私にとっても予想外の10年でした。

ラジオで話を始めた頃は、正直不安でいっぱいでした。ラジオでは、古代文字をお見せすることができないので、おしゃべりだけでイメージが伝えられるかとても気がかりでした。その上、できるだけわかりやすい字を取り上げないと聞いている人には伝わらない難しさにもぶつかりました。お見せすれば一発でわかる古代文字も、それができないとなるとどうしたらいいのか、試行錯誤の日々でした。

それでも、20回、30回と数をこなしていく間に、開き直りが生まれたり、岸田さん、光部さんの上手な「合いの手」に救われたりしながら、月に2回のラジオが自分の生活の中で習慣化するようになっていました。そして、気がつけば224回目を迎えていたという次第です。

毎回、ラジオで話した後このブログに話した内容を載せました。おかげで、ラジオを聞いていただいたリスナーの方々や漢字の成り立ちに関心がある方など、多くの皆さんにブログを読んでいただく機会に恵まれました。

今回はじめて、その中で、アクセス数が多かったベスト10を調べてみたところ、早い回に放送したものが上位にあがってきました。やはり、10年近くブログに載せている間にアクセス数が積みあがっていったということだと思います。

ちなみに、1位のアクセス数は14000でした。その第1位は第13回(2014年11月17日放送)の「優しいという字について」でした。福島県喜多方市のお店に飾られていた「」の古代文字から話を始めました。「優しい」の「優」は人の名前にも使われますし、みんな好きな字ですから調べたいと思われる方が多かったのではと推測していますが、14000アクセスは、つもりに積もった結果とはいえ、漢字のブログとしてはすごく訪ねていただいたのだなと改めてその数の多さに驚きました。

第2位は第64回(2017年2月13日)「抽斗(ひきだし)」というタイトルの回でした。
「アフパラ」のメッセージテーマ「引きだし」に便乗した回でしたけど、読みの難しい「難読漢字」が好まれることも多いので、こういう漢字への関心も高かったということでしょうか。

そして、第3位は第1回「雷に田があるのはなぜだろう?」でした。
偶然このブログに出合って興味を持っていただいた方が、第1回は何を取り上げているのだろうと見ていただいた結果なのかと思います。現在の「雷」の字には「田んぼ」の「田」があるように見えますが、古代文字を見るとそうではありません。「成り立ち」を知ると漢字は何倍も面白くなる、そんなことを伝えたいと取り上げた最初の漢字でした。

ということで、ベスト10に入っている回のほとんどが、2桁回の放送でした。

ちなみに、第4位以下も第11回「秋という字に火があるのはなぜだろう」、第45回「卒から旅へ」、第29回「日と陽」、第4回「虹という字の中に虫がいるのはなぜだろう」、第83回「一から十」 第72回「車という字について」でした。本当にいろいろな漢字を扱わせてもらいました。これからも、ブログは開けておきますので、漢字の成り立ちに関心を持たれたら、気軽にお越しいただければうれしいです。

 

結・篆文

結/篆文2200年前

さて、最終回の締めくくりはこの字にしようと思っていました。「結ぶ」の「」です。

この字は紐を結んだその結び目に思いを閉じ込めて願いをかなえようとする、古代の人々の思いがこもっている字です。今日でラジオはおしまいになりますけど、みなさんとともに紡いだ大切な時間がいつまでもそれぞれの皆さんの心に結び目となって残りますように、そんな気持ちを込めて終わりにしたいと思います。

皆さん、永い間、このコーナーにお付き合いをいただき、本当にありがとうございました。

そして、13年間この番組を引っぱって来られた岸田さん、光部さん、ディレクターの奥延さん、本当に長い間お疲れさまでした。私も10年間3人の方々に支えられて番組の一員のつもりで楽しい時間を過ごさせていただきました。改めて感謝申し上げます。これからのご活躍も期待しております。お元気で!

放送日:2024年3月25日