船屋秋月北野天神1

北野天満宮の入り口、今出川通沿いの北東角に和菓子店「船屋秋月」がある。ここの名物最中が「北野天神」である。その最中に書かれていた文字が篆書(てんしょ)体の「北野天神」である。それにしても、こんなにきれいにどうやって文字を入れるのか興味をひかれるが、まずは漢字の成り立ちの説明から入ろう。

最中の「北」という字をよく見ると手を挙げた人が背中合わせになっているように見えないだろうか。そのように見えたら正解である。北という字は二人の人がそっぽを向いている形である。(そむ)くという字に北という字が入っているのはその意味からである。方角の北を示す場合は、「背中」の意味で用いる。古く王様は明るい南の方角に向かって座ることになっていた。「天子は南面す」である。その時、背中側に「北」の字を当てて「きた」を指す方角の字としたのである。

「野」は古くは埜( 埜・異体字 )と書いた。林の中に「土」=「(やしろ)」があるところをいう。異体字「 埜・異体字 」の林の中の「予」は音を表す。「野」の「里」は田の神を祭る土(社)のあるところ。それに音を表す「予」を加えて「野」となる。もと社のある林や田畑を野といい、のち「のはら、いなか」などと用いる。

「天」は人が手足を広げて立っている「大」の姿を正面から見た形。その大の上に大きな頭をつけたり一本線を書いたりして、人の体の一番「てっぺん」にある頭を表すのがもとの意味。やがて、その「頭のてっぺん」という意味を広げて「そらのてっぺん」を「天」というようになった。天は「神」のいるところと考えられていたので「天にいる神」=「天神」と使われるようになった。

船屋秋月の「北野天神」は、餡と最中が別々になっているので、食べるとき餡をはさんで仕上げる。予想以上に餡が多くはみ出しそうになりながらも、最中のさくっとした心地良い音を立てていただいた。

古代文字
北

北/甲骨

埜・甲骨

埜/甲骨

野・篆文

野/篆文

天・甲骨1

天/甲骨

天・甲骨2

天/甲骨

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