車・甲骨(車/甲骨3300年前)

」という字の甲骨文字はとても印象的でわかりやすい形をしています。二つの車輪があり、車軸((ながえ))の前方にはリヤカーの把手(とって)のような横木((くびき))があります。横木(軛)は馬とつなぐためのもので、「車」はその横木(軛)と二つの車輪からなる馬車の形からできた字です。この場合の馬車は、自家用車として使われたものではなく、(いくさ)のための兵士が乗る車=「兵車」として使われました。ですから、戦とかかわる字の中に多く入っています。

軽・篆文

軽/篆文2200年前

例えば、軽乗用車の「」という字も戦用の馬車から生まれた字です。
戦場で使われる兵車はできる限り小回りが利いて、素早く動くことができるように軽く作られました。兵車が「軽く」作られたことから、兵車の「かるさ」を表す字として「軽」が作られました。ですから、「軽」には「車へん」がついています。

両・金文

両/金文3000年前

さて、馬車と馬をつなぐ横木((くびき))が二つになると二頭立ての馬車になります。その二つの横木(軛)を表した字が、両方とか両側という時の「(兩)」という字です。「ふたつ、相並ぶ」の意味を持つ字です。また、昔は二頭立ての馬車が中心であったことから、車の代表として、「車輛(車両)」というようなときにも用いられました。

庫

庫/篆文2200年前

連・篆文

連/篆文2200年前

戦に使われた兵車。その兵車を大切に保管する場所が「車庫」という時の「」です。建物を表す「广(げん)」と「車」との組み合わせ。また、戦に出かける時たくさんの兵車が道を並んで進んで行く様子から「つらなる」という意味の「」という字もできました。

軍・金文

軍/金文3000年前

一族の旗をなびかせ、兵車に乗って敵国に向かうひとかたまりの集団を「」と呼びました。戦に出かける軍隊は、多くの場合3つの部隊に編成され、右軍、中軍、左軍と呼ばれていました。「軍」という字は大きな旗の下に集まる兵車を表した字です。

揮・篆文

揮/篆文2200年前

運・篆文

運/篆文2200年前

3軍を統率する司令官が、大きな旗を掲げた馬車に乗り、旗を使って全軍を指揮しました。
「指揮」という字の「てへん」に「軍」と書く「」は、まさに司令官が旗を振って指揮することを表す字です。その司令官の旗の指図で全軍が移動することから、「めぐる、うつる、はこぶ」という意味の「」という字もできました。

中・金文

中/金文3000年前

司令官は全軍を統率するために、3軍の中の「中軍」にいて、馬車の中から指揮しました。
その馬車には、旗の上下に吹き流しをつけた大きな旗竿が掲げられていました。古い文字はその様子をよく表していますが、その文字の中から吹き流しが取れた字が、現在の「」という字です。司令官のいる馬車こそ、全軍の中心でした。「中」が中心の意味を持つのは、軍隊にまつわる成り立ちの中から生まれた字だからです。

陣・篆文

陣/篆文2200年前

全軍を率いて敵国に攻め入っていくとき、最前線で基地を作ります。それが「」です。多くの兵車が勢ぞろいして次の戦いに備えます。陣に勢ぞろいした兵車は壮観だったに違いありません。「陣」の中に車が入っているのも、こうした理由からでした。

放送日:2017年6月19日