(新/金文3000年前)
新しい年が始まって3週間が経ちました。今回は「新しい」の「新」という字の成り立ちから始めます。「新」は「辛」と「木」と「斤」との組み合わせです。
辛/金文3000年前 |
至/甲骨3300年前 |
「辛」は取っ手のある針の形からできた字です。古代の人々はこれを入れ墨用の針や儀式に用いる投げ針として用いました。この字を「つらい、からい」と読んだのは、入れ墨をする時に伴う痛みからきたものです。その「辛」は、「新」では省略されて「立」の形だけを残しています。
取っ手のある針=「立」の下には「木」があります。古代中国では、神聖な木を選定する時、「辛(針)」を投げて決める儀式が行われました。大切な建物を建てる時、その場所を選定するのに「矢」を放つ儀式が行われたのと同じです。(矢が刺さった場所を表す字が「至る」の「至」という字です。そこに建てた大切な建物が「室」です。)針を投げて選んだ木を「斤」=「斧」で切ることを「新」といいました。新に木を選び出すことから「新しい」という意味になりました。
薪/篆文2200年前 |
さて、何のために木を選び出したのでしょうか。白川先生は亡くなった人の新しい位牌を作るためだったと考えておられます。位牌を作った後に残った木は「火祭り」の時の「たきぎ」として使われました。それが、「草かんむり」に「新」の「薪」という字です。
親/金文3000年前 |
新しく作った位牌は祖先を祭る建物に安置されました。位牌をじっと見つめる親しい人の姿が浮かびます。新しく作ったその位牌は「おや」のことが多かったのでしょう。針を投げて選んだ木で作られた位牌をじっと見つめて拝む姿が「親」という字です。ですから、「親」は「したしい、おや」という意味で用いられるようになりました。
話は変わりますが、今日のラジオのテーマは「第1回なぞなぞ大会」ということなので、私も漢字にまつわる問題で参加させてください。
平安時代の嵯峨天皇の御代のことです。宮中に「無悪善」と書いた立札が立てられました。天皇は当代随一の知恵者「小野篁」に読むように命じるといとも簡単に読みました。天皇はこんなに簡単に読めたのは篁自身が書いたからに違いないと怒り、篁に問いただすと、私はどんな字でも読めますと弁解したので、それならこの字が読めるかと天皇は言って、「子ども」の「子」という字を12個並べ、どう読むか答えろと言いました。
- 問題1「無悪善」をどう読みますか、答えなさい。ヒント:「悪」は「さが」と読みます。
- 問題2「子子子子子子子子子子子子」 どう読みますか答えなさい。ただし、途中に「の」が二回入ります。
ご存知かもしれませんが、鎌倉時代初めの「宇治拾遺物語」に出てくる有名な「なぞなぞ」です。小野篁はこれもすらすらと読んだそうです。ということで、嵯峨天皇は感心し、怒りをおさめられたとのことです。
日本人はこんな古い時代から「なぞなぞ」が好きなのです。
答え
- 問題1 「悪無くて善からん」=「嵯峨なくてよからん」
- 問題2 「子子の子 子子子 子子の子 子子子」
猫の子 子猫 獅子の子 子獅子
放送日:2018年1月22日
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