放送日:2014年7月21日

北

方角を表す「北」という字は、人の姿から生まれた漢字です。しかも、ひとりではなくふたりの人の姿から生まれた字なのです。

ちなみにひとりの人の姿から生まれた漢字には、
・・・ひとりの人が手と足を左右に広げて大きく見せるポーズから生まれた字。
・・・人が足を交差させているポーズから生まれた字。などがあります。

では、北という字は二人がどのような姿(ポーズ)をしている字なのだろう?
下の古代文字を見てください。「北」という字の左と右のパーツが二人の人を表しています。どんな姿かわかりますよね。それぞれの人が背中合わせに立っているのです。

背中合わせに二人の人が立っている姿、それが「北」。

だから、「せ・せなか」という意味を持つ。同時にそっぽを向いている姿でもあるので、仲たがいしている様子を示すことから「そむく」という意味も持っています。→「背反」

北シリーズ

その字がどうして方角の「北」を表すようになったのだろう?

古く中国の王様は儀式を行うとき、常に明るい日差しが降り注ぐ方角を向いてお座りになっていました。その方角を南としたのです。「天子は南面す」ということばがあります。それで、王様の向く方角と反対側、背中に当たる側(方角)に「北」という字を当てるようになりました。(漢字が生まれたのが北半球だったからこうなったのですが・・・)

その後、北という字がもっぱら方角を表す字として使われるようになったので、もとの「せなか」の意味を表す字を、体を表す月(にくづき)を加えて作ったのです。その字が背中の「」という字です。だから「背」には「北」という字が入っています。

ところで、戦いに負けることを表す「敗北」という熟語に北がはいっているのはなぜだろう?負けて南に逃げても、東に逃げてもいつでも「敗北」というのはどうしてだろう?(「北」の成り立ちがわかれば説明出来ます)。
答え。負けて逃げる動作は常に敵に背中を見せることだからです。どんな方角に逃げようと負けて逃げることを「敗北」というのです。