制・篆文(制/篆文2200年前)

今回は「制服」の話です。制服の「」の字の成り立ちからです。「制」の右側((つくり))は、「刂(りっとう)」=刀の形からなり、刀(はさみ・ナイフ)で物を切ることを表します。だとしたら、「制」は何を切る字でしょうか?左側の「制・パーツ」が切られるものを表しています。現代のパーツの形ではわかりにくくなっていますが、古い文字を見ると「木の枝」を表しています。木の枝を切る=今でいう植木屋さんが木を切りそろえる、剪定(せんてい)することを表す字です。

「制」は、枝を切ることによって木を整えることから、いろいろな物事を整理して「きまり、さだめ」を作ることの意味で使われるようになり、「規制(物事のきまり、きまりに従って制限すること)」や「制定(法令やきまりを定めること)」の字に用いられています。「制服」を学校や会社が定めた服という意味で使うのも「制」が持っている「さだめ」の意味からです。

また、「制圧(強い力で相手を押さえつけること)」や「制裁(集団の規律に背いたものに加えられる圧力)」のように「おさえる、さばく」の意味ともなり、強制する(無理に従わせる)の意味で用いられます。

製・篆文

製/篆文2200年前

木の枝をはさみで切りそろえることをいう字が「制」だとしたら、「布」を切りそろえて衣服を作ることを何というでしょうか。それを「」と言いました。衣を「仕立てる」ことから、すべて「ものをつくる、つくる」の意味で用いられるようになります。「製」の字の意味とつながって「制服」の「制」も「つくる」の意味で用いられるようになりました。

ということで、衣のある「製作」と衣のない「制作」の二つの言い方があります。製作は「機械や道具などものを作ること」、制作は「絵画などの芸術的なものや放送番組などの作品を作ること」に用います。

ところで、木の枝を切って整えることを「制服」の「制」と言いましたが、同じように長さの違う木の束を打って(たたいて)長さを整えることをいう字があります。バラバラのものを正す正しい形にすると考えたのでしょうか。「正しい」という字が入っています。すでに何回も言ってきましたが、「整える」の「」です。木の束を表す「束」、その束をたたいてそろえることを示す「(ほく)」、そして、「正」という字が入っています。「整」という字も木の束をととのえることから生まれた字でした。

服・金文

服/金文3000年前

さて、最後に制服の「」です。「服」は古い文字を見ると、儀礼の時に用いる盤(月)の前で、人の背中を手で押してひざまずかせている形をしています。まさに、「服従」、「降服(伏)」のポーズです。「服」はもともと「服従」、「屈服」を表す字でした。現在「服装」の「服」として用いるのも、体に従わせて(あわせて)作る(着る)ことから「(ふく)」の意味で用いられるようになりました。

3月、様々な別れを経て、4月、真新しい制服に身を包んだ子供たちとの出会いを楽しみにしています。

放送日:2018年3月26日