あけましておめでとうございます。
年明け最初のテーマは、その年の「干支」にちなむ話題を取り上げます。
今年は十干十二支の「庚子」の年。「かのえね」です。10と12の最小公倍数の60で一回りする数え方でいうと今年は第37番目。十二支でいうと「ね、ねずみ年」。十二支が一巡したスタートの年になります。
「干支」による暦(こよみ)は、すでに漢字が生まれた3千数百年前からありました。三千数百年間、脈々と用いられてきたこの暦こそ、人類の「歴史遺産」に認定してもおかしくないほどすごいことです。
庚/甲骨3300年前 |
康/甲骨3300年前 |
まず、「庚子」の「庚」です。ふだんあまりなじみのない漢字ですが、古代文字(甲骨)は、「両手( )で杵( )を持つ」形からできています。いわゆる、穀物(米など)を杵で搗いて「脱穀・精米」する形だと言われています。今の字に「广(まだれ)」がついているのは、おそらく、庭先(庇のある場所)で作業が行われたことから付け加えられたと思われます。
その作業で、米についた「ぬか」がとれてきれいになることを表した字が「健康」の「康」という字です。「やすらか」という意味で用います。古い文字を見ると「庚」とほぼ同じ形ですが、そこに粉が飛んでいる様子が加えられています。その粉が「ぬか」で、「糠」と書きます。「康」が不純なものを取り去って清らかにすることなら、身体から悪いものが取り去られている状態を「健康」というのもうなずける気がします。
暦の中では、「杵で脱穀・精米すること」の意味で用いられているわけではありませんが、「庚」という字は十干を表す字の一つとして現在まで用いられています。
子/金文3000年前 |
子/金文3000年前 |
次は「十二支」を表す「子」です。「ねずみ年」の「ね」を表しますが、意味の上では「子」と「ねずみ」とは関係がありません。
「子」は「子ども(幼児・赤ちゃん)」の「子」です。左側の古代文字(甲骨)の「子」は、手が上下になっています。この形は、子どもは子どもでも王子の身分の子どもを表しています。右側の古代文字(金文)は、「両手とも上に挙げた子ども」の形です。こちらも比較的大きな頭が赤ちゃんらしいですが、こちらの子どもは庶民の子どもを表しています。手の上げ下げで込めた思いが違います。デリケートな字の作り方です。いずれにせよ、この場合は、「ねずみ」とは関係のない字です。
さて、漢字の一部に子どもの「子」が入っている字を何か思いつきますか。
例えば、「学校」の「学」。「漢字」の「字」。「季節」の「季」。「親孝行」の「孝」等など。
学/甲骨3300年前 |
字/金文3000年前 |
「学」は×型の印(千木)を屋根につけた神聖な建物の中で子どもたちが学ぶ場所。
「字」は、生まれた直後につけた仮の名前を表す字でした。古代中国では、生まれるとすぐに先祖の神様に生まれたことを報告する習慣がありました。お宮に行って報告する際、仮の名前を告げました。それが「字」でした。その後、しばらくたってから正式にお宮に報告に行く際には「本名」を告げました。それが「名」という儀式でした。
季/金文3000年前 |
孝/金文3000年前 |
「季」は「禾(か)」と「子」との組み合わせ。豊作を祈る田の舞いをする子どもの姿。たいてい、「末の子」が行なったので、「末の子」を「季」といいました。やがて、春季のように「とき」の意味となり季節の「季」のように用いるようになりました。
「孝」は「 」と「子」との組み合わせ。「 」は長い髪の老人。子どもが老人を背負う形。「孝行」の意味となります。
他にもまだ「子」の入った漢字があります。例えば、「孫」。「孤独」の「孤」。「生存」の「存」。「孟子」の「孟」。「孔子」の「孔」。「浮く」の「浮」。等などです。それぞれの字にどんな思いが込められているか、いろいろと想像してみてください。
今年は「庚子」の年。文字通り、安らかに子どもたちが過ごせる年になりますように。
本年もよろしくお願いいたします。
放送日:2020年1月13日
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