政・甲骨

8年近くに及ぶ安倍政権が終わり、新たな「菅政権」が誕生しました。ずいぶん久しぶりの大きなチェンジにもかかわらず、あまり驚きがないのは、安倍政権の継承を謳う「番頭さん」の昇格といった順当すぎる流れゆえだろうと思います。

とはいえ、コロナ禍の大変な時期に「政治」がかじ取りを間違えないで、正しい方向へと国民を導いていってくれることを願うばかりです。

政・甲骨

政/甲骨3300年前

政・金文

政/金文3000年前

政・篆文

政/篆文2200年前

そこで、今日は「政治」の「」という字を取り上げます。

「政」という字は、「正しい」の「正」と「(ぼくにょう・のぶん)」との組み合わせです。「攵(ぼくにょう)」は、「棒のようなものを手に持つ形」からできた字で、「棒でたたく」ことを表わします。前回の故障の「故」にも入っていました。私たちが身近に用いる字の中にもかなり入っています。例えば、教育の「教」。「敗北」の「敗」。攻撃の「攻」。救う。散る。放つ。改める。敵。などなど思いつくだけでもいろいろあります。その中に「政治」の「政」もあります。

「まつりごと」を表わす「政」という字の中に、なぜ棒でたたく「攵」が入っているのか。「正しい」の「正」という字を棒でたたくとはどういうことでしょうか? 政治の「政」とは、もともと「正」をたたいて歪ませてしまうものなのか。(歪むは「不」「正」と書きます。)

正・甲骨

正/甲骨3300年前

正・金文

正/金文3000年前

正・篆文

正/篆文2200年前

その謎を解くために、「」という字の成り立ちから見ていきます。

「正」は「一」と「止」との組み合わせ。しかし、古代文字(甲骨)見ると、現在の「一」の部分は、四角い「口」のような形をしていることがわかります。その四角い「口」の下にあるのは、「足あと」の形です。「止」という字は足あとの形から生まれた字です。

この字の場合、四角い「口」の形は、街を囲む四角い城壁を、「足あと」は「行くこと」を表わします。つまり、街の城壁に向かって人が進んで行く姿を表わしています。

征・甲骨

征/甲骨3300年前

征/金文3000年前

政・篆文

征/篆文2200年前

では、何のために進んで行くのか。

それはその城壁で囲まれた街を攻めるためです。「正」は街に攻め入り、征服することを表わす物騒な字なのです。確かに、「征服」の「」という字に「正」が入っています。道を表わす「彳(ぎょうにんべん)」の入った征服の「征」のもとの字こそ「正」という字でした。「正」とは敵を征服することです。攻めて勝てば、勝った側が「ただしい、ただす」ということになるので、正しいという意味になりました。勝てば官軍。勝者こそが正義というわけです。

その街を征服した司令官のことを「正」と言いました。今でも「警視正」などというえらい警察官のことをいう官職があるのは、その名残です。

さて、征服した司令官が最初に行なうのは何でしょうか。それは、征服した住民から「税」を取ることです。今でも「税金」を国民から徴収しないと「まつりごと=政治」は始まりません。しかし、征服された住民の中には素直に応じない人もいたかもしれません。ですから、少し手荒に取り立てたかもしれません。手に棒をもって鞭のように威嚇しながら税を集めたのかもしれません。

征服者=正が税を集めることを表わす字が「政治」の「政」ということです。「政治」の「政」に「攵」が入っているのにはこんないわれがあったからです。

現代でも3千年以上前の古代中国でも治政者(為政者)が考えることは一緒です。

整・篆文

整/篆文2200年前

最後に「正」と「攵」とが一緒に入った字をもう一つ紹介します。それは「整頓」の「」=ととのえるという字です。

「整」は「(ちょく)」と「正」との組み合わせです。「敕」の中の「束」は、薪(柴の木)のたばです。薪のたば(束)が不ぞろいなのをたたいて(攵)ととのえる(正す)ことを「整」と言いました。のち、「薪」だけでなく、すべてのことの不整合を「ととのえる、ただす」こと、そして「正しい状態にする」ことを表わすようになった字です。

政治の「政」は、税を集めて「まつりごと」を行うことです。国民から広く税を集め、それを公平・公正に使って、国民を幸せに、正しく導くことが政治のかなめです。

ゆめゆめ、政治家が自分の保身や都合のために整わない政治をおこなわないよう、私たちもまた、目を光らせておかなければなりません。

放送日:2020年9月28日