北野牛2

2021年もあとわずかです。今年も、コロナに始まりコロナに暮れる1年となりましたが、この番組への電話出演は今日で24回目を迎えました。今日が今年最後の放送になりますから、1年を駆け足で振り返ってみたいと思います。

今年の放送を振り返ってみると、意外にアフパラのテーマに便乗したものが多くありました。(旬の材料を大事にしたともいえますが、私が手を抜いたということかもしれません。)

目・甲骨

目/甲骨3300年前

華・金文

華/金文3000年前

2月「不思議な能力」(第154回)のテーマに便乗して、「不思議な力~目」と題して、目の持つ不思議を取り上げました。目こそが、見えないものを見、不正を暴く最大の武器でした。

扱った漢字:目、想、直、徳、省、夢

3月には、「」(第155回)のテーマに便乗して、古くは草の「はな」と木々の「はな」を表す漢字が違ったことを話しました。草の花を表す漢字は、中華の「」(のちになって「花」という字が出来ました)、木々の花は「栄*」。「栄える」という字で「木々の花」を表すことがありました。ですから、この二つを合わせて「すべての花々が咲き、さかえ華やぐ絶頂の時」を示す「栄華」という言葉もできたという話でした。(第156回も「口」のテーマに便乗しました。
*栄:もともとは夜に明かりをともすかがり火を表す字でした。

扱った漢字:華、花、栄、拝、秀、芳、英

果

果/金文3000年前

5月には「ご当地お菓子」(第160回)のテーマで、お菓子のルーツは乾したフルーツ(果物)から始まったこと。京都には今も古いお菓子の形を残した「清浄歓喜団」というお菓子があることをお伝えしました。

扱った漢字:果、菓、課

魚・甲骨

魚/甲骨3300年前

象・甲骨

象/甲骨3300年前

6月の第2週「水族館・動物園」(第161回)のテーマの時は、水族館代表として「」を、動物園代表として「」を取り上げました。ただ、これらの字は、「象形文字(形を象った絵のような文字)」で、漢字の一番古い形を今に伝えてくれている字ですが、見てもらわないと説明がしにくいので、ラジオでは取り上げにくい字だということも話しました。

扱った漢字:魚、漁、象、爲(為)

玉・甲骨

玉/甲骨3300年前

駄・篆文

駄・妙/篆文2200年前

6月の第4週は「石・岩」(第162回)のテーマでした。石の中でもとりわけ美しい石は「」と呼ばれ、その美しい宝石の「玉」を身に着けると、玉が放つオーラで生きる力が倍加すると信じられていたこと等を話しました。古い時代の人々はお守りとして、玉を腰からぶら下げていました。

扱った漢字:石、璧、陽、理

8月には「駄菓子」(第165回)のテーマがありました。「駄菓子」の「」は、今は「馬と太い」と書きますが、昔は「馬と大」と書いて、大きな馬を表しました。大きな馬は力が強いので、荷物を運ぶ仕事を主にしました。そこから、人を運ぶ馬(サラブレットのような馬)より一段低いとみなされて、「駄馬」といわれるようになりました。だから、それを「ちょっと劣った(安い)お菓子」という意味で「駄菓子」と言われるようになったという話でした。馬には迷惑な話ですが。

扱った漢字:馬、駿、駅、駐、驚、験

長・甲骨

長/甲骨3300年前

老・甲骨

老/甲骨3300年前

さて、今年最後の便乗は、10月の「髪型変遷」(第169回)でした。髪は「長老」の長い髪の毛がもとになった字でした。「長い」という字も、老人の「」も長い髪の毛をはやした老人から生まれた字でした。平均寿命が長くなった現代だからこそ、「髪の薄さ」が年を取ったことの象徴のように見えますが、古代では年寄りこそ美しい長い髪を持っていたのです。

扱った漢字:長、老、孝、髪

以上、この1年間でラジオの「メッセージテーマ」に便乗した回数は、7回もありました。1/3に迫る勢いでした。メッセージテーマが漢字に絡んでいるとどうも尻馬に乗っているようです。是非、来年も尻馬に乗れそうなお題が多いことを望みます。

ここ1か月半ばかりはコロナも沈静化していたので、落ち着いた日々を過ごしてきましたが、ここ数日京都でもオミクロン株の陽性者が出てきています。どうか、大きな広がりになりませんようにと念ずるばかりです。

皆様におかれましても、穏やかで平穏な新しい年が訪れますように、お祈り申し上げます。

今年1年、「漢字なりたち教室」をお聞きいただきありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

放送日:2021年12月27日