浴・甲骨

コロナで様々な制約があった祇園祭も、今年はようやく、これまで通りの祇園祭になりそうです。7月1日から始まった祇園祭の行事は、7月17日の(さき)祭りの「山鉾巡行」、24日の後祭りの「山鉾巡行」をハイライトに、7月いっぱい続きます。

その中で、今日(7月10日)は「神輿洗い」という行事が、夕方から四条大橋で行なわれます。

八坂神社に祀られている3台の神輿(東御座・中御座・西御座)を代表して「中御座神輿」を四条大橋まで運び、事前に鴨川から汲み上げた「水(神用水)」を(さかき)につけて神輿に振りかけて清める儀式が「神輿洗い」です。その振りかけられた水を人が浴びると厄除けになるとも言われています。

おそらく今日も多くの人たちが四条大橋に集うと思いますが、こうして祭りに関わる神輿まで水で清めて、本番を迎える準備をします。(ちなみに、巡行は山鉾だけでなく、八坂神社にある3台の神輿も山鉾巡行の日に京都の街中を巡行します。)

このように水が清めの役割を果たす風習は、日本では「(みそぎ)」と呼ばれてきました。日本では、はるか昔の古事記の世界にまでさかのぼると言われていますが、中国でもそのような風習があったことを白川先生は述べられています。その風習から生まれた漢字があります。

浴・甲骨

浴/甲骨3300年前

一つ目は「」です。昔は沐浴(もくよく)」が祭事の時の「禊」の方法でした。「沐」は髪を洗うこと。「浴」は身を洗うことです。頭から水をかぶり、身を洗って清めたのです。3300年前の「浴」の字には、(おけ)のような物に入っている人の回りに水滴の点々がついています。身を清めていることを表す印象的な字です。

修・篆文

修/篆文2200年前

攸・金文

攸/金文3000年前

二つ目は、「修学(旅行)」の「」です。「おさむ、おさめる」と訓読みします。

「修」は「(ゆう)」と「(さん)」との組み合わせです。「」は、金文を見ると「人」と「水(水滴二つ)」と「攴(枝を手に持つ形)」との組み合わせです。人の背後から水をかけて洗う形で、(みそぎ)をすることを表します。それに心身が清められたことを示す「彡」が加えられると「」になります。修の篆文・現代の字の中にある「人(イ)」の横にある「|」は「水」を表しています。「修」は、禊をして心を清めること。スッキリとした状態を指します。

悠・篆文

悠/篆文2200年前

その時の心持ちを「攸」に「心」をつけて「」と言います。けがれがない状態ですからゆったりしているのです。まさに「悠々自適」と使う時の「悠々」です。「修」と「悠」は、水で心身を清める禊から生まれた字でした。

条・條・篆文

条・條/篆文2200年前

最後に、「一条・二条・三条」等と使うときの「」です。現在は略体で用いていますが、旧字体は「條」です。今扱った「(ゆう)」と「木」との組み合わせでできていました。「攸」は禊をすること。それに「木」が加わります。この木は、禊をするときに水をつけて振りまく葉っぱのついた「木の枝」です。

今日、これから行われる「祇園祭の神輿洗い」でご神水を(さかき)につけて振りかけると言いました。まさにこの場合の「榊」を表す字が「條(条)」です。現在の字は略した上に、なおかつ整形しているので、もう出所が分からなくなってしまいましたが、禊の水を振りまく木の枝が「條(条)」の始まりでした。

あと4時間もすると、四条大橋に「中御座神輿」が運ばれ、「神輿洗い」が始まります。どうか今年こそは、コロナに煩わされることのない、いつも通りの、にぎやかな祇園祭でありますように。心から願っております。

放送日:2023年7月10日