六角通富小路角・画材屋「金翠堂」

金翠堂4

六角通(ろっかくどおり)富小路(とみのこうじ)(かど)にこの店はあった。通りに面して軒下と玄関上に二つの扁額(へんがく)が掲げられている。玄関の上に掲げられている額は大きなものではないが、きれいな古代文字(篆書(てんしょ)体)で「金翠堂(きんすいどう)」と書かれていた。

金翠堂・扁額

店名の名前の通り(みどり)色が文字を彩り、多少色が薄くなってはいるが、それでも十分人の目を引く味わいを残している。写真に撮らせてもらおうと中をのぞくと、気のよさそうな御主人が「かまへんよ」と言って玄関まで出てこられた。軒下にある草書体の大きな額がお気に入りらしく、私がこの篆書体の小さな扁額を写真にといっても、上のほうがいい額だから写真を撮るならそっちのほうがいいと盛んに勧められる。

金翠堂は画材屋である。店の中の古い棚には画材道具が遠慮気味に置かれていたが、古くからこの地で手広く商売をしておられたことを、この二つの古風な額が示している。今はこじんまりとした店構えになってはいるが、玄関の大きな硝子戸にも扁額と同じ書体で店名が書かれ、磨かれたガラスには外の風景が鮮やかに映り込んでいた。街中の遺産としていつまでも守り続けてほしい建物である。

さて、漢字の成り立ちである。「金」は漢字が生まれた頃(殷・周時代)には「銅」のことをいった。「金」の字形は型に流し込んだ銅の塊を表す。それらは赤金(あかがね)と呼ばれ、青銅器を作る材料とされた。青銅器に書かれた「 金・金文(金)」の字をみると、右側に型( 金のふた は(ふた)を表す)に流し込まれた銅がレールの断面の形で描かれ、左側には材料である「銅の塊」が二つ描かれている。この二つの「 金の点々 (点々)」は、今も金の字形の中に「 金の点々(現在) (点々)」として残っている。

「翠」はカワセミのきれいな青(緑)色の羽をいう。「翠」の中の「卒」は音を表す。酔(醉)のように卒に「スイ」の音がある。

「堂」は尚と土との組み合わせ。尚は神を祭る窓辺に神の気配が現れること、土は土の壇。土壇の上に建てた神様を迎える建物のことを堂という。のち「たてもの」一般に用いる。

古代文字

金・金文(金・金文)

翠・篆文(翠・篆文)

堂・金文(堂・金文)


1 Comment

  1. はじめまして。いつもこっそり(?)拝読いたしております。暖簾や扁額の記事に惹かれて拝読するようになりました。素晴らしい記事ばかりで、楽しませていただいております。先日は、ラジオ番組も探して待ち構えておりましたが、はじまらず・・・日を間違えたようでございました(^^; 第二、第四月曜でしょうか?明日の夕方四時頃はじまるのでございましょうか?

    わたくしは画が好きで、書が好きで、あちこちをさまよっています。関西圏にまいりましてから二十年くらいでしょうか。京都の方々はこれこそ探していた日本の風景といったものを残しておいでで、いつもはっとさせられます。

    そうして、先生のおとりあげの扁額はどれも美しいですね。篆書体の屋号というのは、実にモダンでいつまでも古くならない。こうして、いつの時代も目に新しさをもたらしてくれるということは、それだけ完成度が高いということでございましょうね?古い扁額のものは、線の一つ一つが生き物のようにエネルギーを発しているようで、何かを受け取る気がいたします。それが欲しいと、見るものに訴えるエネルギーを持っていて。ビジネスへの気概を感じます。

    ところで、今、いくつかの文字について考えなければならず、それは素人考えで進めてはいけない件ですのでたいへんに頭を痛めております。それで、ゴット先生のことを思い出しまして、思い切ってお便りいたしております。なにか、どう考えてまいればよろしいのか、ご教示願えないものかと・・・藁をもすがる思いでございます。。

    突然たいへんに恐縮でございますが、下記アドレスまでお便りを頂戴できませんでしょうか。

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